ヤマガタトラベル

ヤマガタを旅するように暮らす。

三日月軒中町店(酒田市)

山形県の御当地ラーメンの一つ、「酒田のラーメン」には三つの系統がある。

一つは既に閉店した港月食堂をルーツとし、そこから満月での修行を経て、新月、華月、花鳥風月、照月と続く満月系。二つ目が既に閉店した大来軒をルーツとし、大来軒遊佐支店、大丸、とみ将、大来軒上安町支店、大来軒中央支店と続く大来軒系。そして、同じく大来軒で修行しながら、三日月軒という名で独立し、そこから支店を増やしていった三日月軒系である。

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さて、今回訪れたのは酒田市の中心商店街の一等地にお店を構える三日月軒中町店。中の口、駅東、高砂、緑ヶ丘と、現存する三日月軒系の中では最も古く、のれんには「本店」と記された老舗である。なお、酒田では三日月軒本店と言うと、かつて北千日町にあった店舗を指すことが多いようだが、その辺りの詳細については不明。店舗移転や事業承継等、様々な経緯があったのだろうか。

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この日食べたのはワンタンメン。魚介ベースの甘めのスープに細めの縮れ麺という、絵に書いたような昔ながらの中華そばだ。今年に入ってから、ワンタンメンの満月、大来軒上安町支店、そして三日月軒中町店と、「酒田のラーメン」を代表する三つの系統の老舗を食べ比べているのだが、この3店舗の中でも最も「昔ながら」のほっとする味なのではないかと思う。もっとも、それは酒田の中心商店街である中町というシチュエーションがそれを演出しているのではないかとも思う。三日月軒も店によってだいぶ味が違うらしいので、機会をみて食べ比べてみたいところ。

 

名称:三日月軒中町店

場所:酒田市中町2-4-7

営業時間:11:00〜18:30

定休日:不定

駐車場:有り(パーキング北斗)

大来軒上安町支店(酒田市)

山形県の御当地ラーメンの一つ、「酒田のラーメン」には三つの系統がある。

一つは既に閉店した港月食堂をルーツとし、そこから満月を経てお店の名前に「月」がつく満月系。二つ目が既に閉店した大来軒をルーツとする大来軒系。そして三つ目が同じく大来軒をルーツにしながら、そこから枝分かれして多店舗化した三日月軒系である。以前はJR酒田駅の隣の清川屋に「酒田のラーメン」の系統図がパネルで展示してあり、詳しい説明も記載されていたので非常に参考になったのだが、どういうことか今では撤去されてしまったのが残念である(クレームでもあったのか?)。

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そして、今回訪れたのは昭和56年創業の大来軒上安町支店。大来軒遊佐支店、大丸、とみ将、大来軒中央支店といった大来軒系(前述のパネル参照)の中でも大来軒の名を冠する老舗の一つである。メニューには丼物もあるためラーメン店というよりも大衆食堂の佇まいで、酒田警察署の裏手の住宅地という立地から、あの辺りの警察署や法務局、ハローワークで働いている人たちが常連客になっているのだろう。店の名前に「月」がつかないこともあってか、酒田のラーメンの老舗でありながら観光客があまり足を運ばないお店の一つだと思う。

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この日食べたのはワンタンメン。昔ながらの中華そば的なあっさりスープにザラッとした歯ざわりが気持ちいい角切りの自家製麺とシナシナチャーシュー。そしてワンタンは満月や三日月軒と比較すると厚手の皮で、ぴろぴろとした食感が気持ちよく、加えて大ぶりなので食べごたえがある。そして、こんなに食べごたえがあるワンタンメンが650円!コスパ・満足度が高い酒田のラーメン大来軒系を代表する老舗である。

 

名称:大来軒上安町支店

場所:酒田市上安町2-15-8

営業時間:11:00〜14:30/17:00〜19:00 ※火曜日は11:00〜14:30のみ

定休日:水曜日

駐車場:有り(店舗前)

ワンタンメンの満月(酒田市)

山形県の御当地ラーメンの一つに「酒田のラーメン」がある。

魚介系のさっぱりしたスープに自家製麺の縮れ麺、加えて薄皮のワンタンが入ったワンタンメンが人気なのが「酒田のラーメン」の特徴といったところだろうか。修行したお店を辿っていくと大きく三つの流れに分かれるようだが、その源流の一つがワンタンメンの満月である。

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ワンタンメンの満月は昭和35年創業。既に閉店している港月食堂をルーツとし、満月で修行した弟子達が清宝苑、新月、昇月、隆月、華月、花鳥風月といった店舗をオープンさせているので、間違いなく酒田のラーメンを代表するお店の一つだ。よく、酒田のラーメンは店名に「月」がつく店で食べれば間違いない、「月系」などと言われることも多いが、同じ「月系」の三日月軒とはルーツが異なることも興味深い。

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この日食べたのはワンタンメン。煮干と鶏のあっさりスープに緩やかに縮れた中太麺と噛み応えのあるシナシナチャーシュー。そして、半熟玉子とふわふわとろとろのワンタン。強いインパクトを求めるのではなく、全体としてまとまりのいいスタンダードなワンタンメンで、この手のラーメンを出されると老舗の看板には敵わないな、と思う。酒田のラーメンを代表するだけあって一定の集客力があるのでスタッフも気持ち多めに配置されており、その辺りが接客の良さに結びついているのも気持ちいい。酒田のラーメンを語る上で必ず押さえておきたいお店の一つである。

 

名称:ワンタンメンの満月

場所:酒田市東中の口町2-1

営業時間:11:00〜16:30 ※金土日は11:00〜21:00

定休日:不定

駐車場:有り(店舗前及び店舗そばの月極駐車場)

かみのやま温泉下大湯公衆浴場(上山市)

山形県を代表する温泉街にかみのやま温泉がある。

上山藩の城下町でありながら、羽州街道の宿場町でもある上山市。城下町や宿場町の面影が残る中心市街地から、それらを見下ろす静かな高台まで広範囲にわたって温泉旅館と公衆浴場が点在しており、特に公衆浴場は大人150円という激安の料金設定なので、上山市を訪れたらほぼ確実にひとっ風呂を浴びてしまう。そして、中でも一番のお気に入りが上山城の中心部にある下大湯公衆浴場だ。

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空洞化が著しい上山市の中心商店街の角を曲がった横丁沿いに鎮座し、ただならぬ存在感を放っているのが下大湯公衆浴場だ。かみのやま温泉の公衆浴場の中でも最も古く、たくあん漬けで知られる沢庵禅師も入浴したと言われる由緒ある温泉である。昭和32年に建てられた建物は改装を重ねながらこの地にどっしりと根を張って年月を重ねてきた風格を感じさせる。

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中に入ると正面には番台があり、番台をはさんで男湯と女湯に分かれるという絵に書いたような銭湯のスタイルだ。券売機で利用券を購入して番台に提出するのだが、入浴券150円という破格の安さのボタンの下に洗髪券100円というボタンがある。洗髪券?

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ごまかすこともできそうだが、洗髪する予定なので正直に洗髪券を購入して番台に提出すると、蛇口のコックがついた洗髪札を手渡される。なるほど、浴室の蛇口はコックが外されていて、これをつけることによってカランを利用することができるのだ(なお、シャワーはない)。

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そして、脱衣所で衣服を脱いで浴室へ。男湯と女湯を遮る壁には蔵王御釜と上山城が描かれており、番台に続いて昭和レトロな風景がたまらない。湯船に入ろうとすると無色透明の熱めのお湯に躊躇してしまうが、奥の方が加水されたぬるめの湯なので、壁の絵を眺めながらゆっくりと湯船につかる。湯量が豊富なので湯船からあふれたお湯が浴室の床を浸しており、地元民らしき入浴客が直に床に座って談笑している。ここにあるのは公衆浴場の原風景。かみのやま温泉に来たら一度は訪れたい公衆浴場だ。

名称:かみのやま温泉 下大湯公衆浴場

場所:上山市十日町9-30

営業時間:06:00〜22:00(12月〜2月は06:30〜22:00)

定休日:年中無休

料金:150円(洗髪料100円)

駐車場:有り(十日町駐車場)

味な店まるき(遊佐町)

ここのところ、大衆食堂が魅力的である。

昭和・平成・令和と三つの元号を経て時代が一巡すると、昭和や平成初期の古いものが新鮮に感じられたり、その良さが見直されるということはままあることだと思う。

最近特にそれを感じるのが大衆食堂だ。2000年以降、デフレによりコンビニやスーパーの弁当や惣菜、いわゆる中食の低価格化が進むと、外食は相対的に価格が高く感じられるようになり、消費者は外食から中食へとシフトしていった。また、外食産業全般において専門店化が進み、幅広いメニューを扱いつつもウリの乏しい大衆食堂は時代に淘汰されてきた。しかし、最近になってそのメニューの幅広さや人間味のあるサービス、昭和レトロな雰囲気が見直されるようになり、ナショナルチェーンの全国一律の商品よりも地域に密着した大衆食堂の方が魅力的に感じるのだ。

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どんな街にも地域密着の大衆食堂はあると思うのだが、遊佐町のそれは何と言っても味の店まるきである。遊佐町の中心部、JR遊佐駅のそばの商店街の一角に立地し、年季の入った建物の佇まい。麺類から丼ものまで網羅した幅広いメニュー構成。そして、店名には「味の店」という冠である。長年にわたって遊佐町で暮らす人々の胃袋を担ってきたことは想像に難くない。

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この日食べたのはチャーシューメン。甘じょっぱい淡麗スープに縮れ麺とシナシナチャーシューという、いわゆる昔ながらの中華そば。どこにでもありそうだけど、ここにしかない、遊佐町から無くしてはいけないお店の一つなのだ。

 

名称:味の店まるき

場所:遊佐町遊佐字京田18-2

営業時間:11:00〜15:00

定休日:月曜日

駐車場:有り(店舗そばの月極駐車場)

風林火山(鶴岡市)

初ラー。新年で最初に食べるラーメンである。

今年の初ラーは早い段階で風林火山に決めていた。仕事が休みで人と会う予定も無く、家族は妻の実家に帰省しているので、夕方以降は誰にも気を遣う必要がない。年末年始休暇の最終日、こんな日こそ匂いなど気にせずにニンニクガッツリのラーメンを腹いっぱい食べたいと思い、初ラーは風林火山に決めていたのだ。

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風林火山が開業したのは2015年。JR鶴岡駅そば、マリカ駐車場の裏手のカウンター7席しかない小さな店舗から始まった。老朽化した小さな物件なので、当時はまさか新しいテナントが入るとは思ったいなかったが、鮮やかな黄色い看板に「ニンニク入れますか?」という大きなロゴ。県内初の二郎系ラーメン専門店ということで、開業前から既存のラーメン店にはない期待を集めていたお店である。

そして、オープン直後から評判を呼び、姉妹店の中華そば雲ノ糸、火山食堂と開業から僅か5年で多店舗展開を進めている庄内のラーメン店の新興勢力である。

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年末年始休暇の最終日の夕方、風林火山鶴岡本店を訪れると既にスープ切れでラーメンは売り切れということで、汁なしニンニクショウガマシを発注。歳とともに食が細くなっているので、二郎系というとどうしても構えてしまうのだが、30回ほどまぜまぜして麺をすすると、コシのある極太麺に濃厚なタレながら意外なほど食べやすい。開業から2年後には煮干系のセカンドブランドを立ち上げたお店だけに、今後どのような展開をみせるのか楽しみなお店である。

2020年の初ラー、ごちそうさまでした!

 

名称:風林火山鶴岡本店

場所:鶴岡市末広町17-15

営業時間:12:00〜21:00

定休日:年中無休

駐車場:有り(店舗向かい)

麺屋酒田inみなと(酒田市)

山形県内、特に庄内で朝ラーのマーケットが拡大している。

基本的にラーメンは昼に食べるもの。朝からラーメンなんて胃にもたれるでしょう?そう考えている人が多数派なのは百も承知だが、実際に朝ラーを提供しているお店が増えているのは事実である。特に庄内は朝ラーを提供しているお店が多く、思いつくだけでも麺屋酒田inみなと、照月、風林火山、月輪、華煌、麺絆英、火山食堂、銀河…といったお店が7:00頃から営業して朝ラーを提供しているのだ。中でも今から10年近く前、他店に先駆けて新規開業と同時に朝ラーを始めたのが麺屋酒田inみなとだ。

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麺屋酒田は2010年創業ながら庄内地方に3店舗を展開する新興勢力のラーメン店だ。コシのあるうどんのような極太麺にあっさりスープ、そしてレンゲに盛られた背脂を溶かしてこってり感を増していくというスタイルはそれまでの庄内のラーメン店にはない革新的なものだった。

そして、本店に次いで2店舗目に出店したのが酒田港そばの麺屋酒田inみなと。注目すべきは朝5:00からという早朝営業で、当初は朝の早い市場関係者をターゲットにしているものと思われたが、次第に朝からラーメンを食べたいという一般市民の需要を掘り起こし、 庄内に朝ラーを定着させるきっかけになったお店だ。

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そして年末のある日、忘年会で酒田市内に泊まる機会があったので、麺屋酒田inみなとへ朝ラーしに行ってきた。店舗は内外装ともDIY感あふれる店構えで、食券機や配膳はセルフサービス、カウンターは立ち食いと、至るところでコストを抑える一方でラーメン一杯が500円のワンコインという辺りにブルーオーシャン戦略を感じさせられる。肝心のラーメンは小麦の風味の強いうどんのような極太麺で、モチモチした食感に手揉みの縮れが加わって口の中で麺が暴れまくる。この麺の個性を活かすためにスープは引き立て役に徹しており、個性的な麺とは真逆のあっさりスープ。一緒に添えられたレンゲの盛られた背脂を溶かしてこってり感を増すことができるが、引き立て役という立ち位置は変わらない。色んな意味で計算され尽くしたようなラーメンだ。

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そして後日。その麺のウマさをとことん味わうべく、再度訪問して船麺を発注。船麺とは、麺屋酒田3店舗の中でも麺屋酒田inみなとにしかない油そばだ。麺のウマさについては言うまでもなく、背脂と辛味噌、マヨネーズを混ぜて食べるジャンク感がたまらない。あれ、麺のウマさをとことん味わうのならつけめんの方が良かったのか?

ラーメンの味については好みによるところが大きく、特に麺屋酒田は麺の個性が強いので好き嫌いが大きく分かれるところだろうが、一定のファン層をガッチリと掴んでいるのは確かである。好みの問題なのでどこが一番ウマいというような順序はつけようがないのだが、唯一無二の個性的な麺とそれを引き立てるスープ、あらゆるコストを抑えた上でラーメン一杯ワンコインを実現させるブルーオーシャン戦略、そして庄内の朝ラー需要を掘り起こす早朝営業と、経営の革新性においては山形県内のラーメン店では随一の存在と言っていいと思うのだ。

 

名称:麺屋酒田inみなと

場所:酒田市船場町2丁目3-5

営業時間:05:00〜14:00 ※土日は05:00〜09:00/11:00〜14:00

定休日:水曜日

駐車場:有り(JFやまがた向かい)