ヤマガタトラベル

ヤマガタを旅するように暮らす。

松山軒(酒田市)

松山軒は全てが最高だった。

濃厚スープにぶよぶよの極太麺。酒田市旧松山町の一等地に構えるお店の佇まいと店主のキャラクター。似たようなラーメンはたくさんあるかもしれないが、似たようなお店は一つもない、間違いなくオンリーワンのお店だった。 

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令和元年9月、そんな松山軒が閉店した。店主の体調が良くないという噂は聞いていたし、夫婦二人での切り盛りだったので、後継者難でいつかはこうなるということは誰もが薄々感じていたはずである。

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味覚というものは非常に曖昧な感覚である。物理的には同じ味だとしても、提供する環境が変わると受け取る側の感じ方も大きく変わってくる。好きな人がつくる料理、自然の中で食べる料理、朝から飲むビール、等々。それらには、普段食べる料理にプラスアルファされた何かがあるはずである。そういう意味では、松山軒はあの場所、あの店主、あの夫婦でなければ出せない味だった。どれだけ修行を重ねても、どれだけレシピどおりに調理しても同じものを出すことのできない、どだい事業承継することなどできない、店主の体力の続く限りのラーメンだったのだ。

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令和元年9月のあの日、突然店頭の貼紙を以って閉店した松山軒。もう、あのラーメンを食べることができないのはすごく残念だけれど、それ以上に店主夫婦に挨拶できなかったのが残念だったよ。長い間ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。