くるまやラーメン鶴岡店(鶴岡市)
人生で最も足を運んだラーメン店はどこだろうか。
実家の近くの馴染みの店か、それとも一人暮らしの際に通ったお店か。人それぞれ色んな思い出があるのだろうが、鶴岡市出身の40代ならばくるまやラーメン鶴岡店という人が多いのではないだろうか。
くるまやラーメン鶴岡店が開業したのは1990年頃。当時は今ほど郊外化が進んでおらず、まだ駅前や銀座通りといった"まちなか"が元気な時代だった。中太麺にニンニクの効いた味噌ラーメンとサービスライス、FC店ならではの居心地の良いボックス席は食欲旺盛な高校生にマッチしていたし、社会人になると飲んだ後に〆のラーメンを食べながらタクシーを待つことも多かった。ラーメンブームによる競合店の増加で足が遠のきつつあったものの、学生時代、そして社会人と、なんだかんだで最も足を運んだラーメン店なのだと思う。
そんなくるまやラーメン鶴岡店の閉店の知らせを聞いたのは令和元年6月のことだった。31年間も続けてきた店を閉店するにあたっては色んな思いがあったのだろうが、後継者がいなければ廃業を選ばざるを得ないのはどの商売も同じこと。後継者難や事業承継の遅れは業種を問わず全国的な問題らしいのだが、この手のFC店こそ後継者難で事業承継が難しいのかもしれない。
閉店前に最後に食べたのは味噌バターラーメンにコーンとサービスライス。学生時代に何度も食べた思い出の味なのだが、思いの外スープの味が単調で、この30年間でラーメンがどれだけ進化したかを考えさせられる。普通のラーメン店ならば「親父の味を守りたい」と事業承継を決意する後継者がいてもおかしくないのだが、FC店の場合は「親父の味」ではなく「FCの味」なのだから後継者難になるのもわかるような気がする。
閉店前の数日間は行列続きだったのは地元民からの感謝の表れなのだろう。長い間ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。